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発作性心房細動の発症を機に心臓弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)が見つかり,弁形成手術と心房細動に対するメイズ手術(ラディアル手術)を受け,さらに術後に発症した感染性心内膜炎の治療を受けた記録です。

他人の心臓弁から作った新しい人工弁

2014年10月27日

他人の心臓弁から作った人工弁の移植(肺動脈弁)に,大阪大学の澤芳樹教授達のグループが日本で初めて成功したという今日の毎日新聞の記事。(最近の心臓関係の「日本初」のニュースはほとんどこの澤グループに占められているような気がする)

他人の心臓弁を移植する手術といえば,ホモグラフトもあるが,記事ではホモグラフトとの違いを説明してくれていないのでよく分からないのだが,素人が勝手に解釈すれば,ホモグラフトは弁の周囲の心筋と血管を含めて丸々移植するのに対して,今回の方法は弁だけ取り出し,更に弁からコラーゲンだけを残して他の細胞をそぎ落として移植する点にあるのだろう。こうすると,移植した弁の骨格の内部に患者自身の細胞が入り込み、自分の組織のようになって長期間の定着が期待できるという。

これが出来るのならば,自分の組織からコラーゲンくらい再生できないのだろうか? 弁の形に再生するのが難しいのかもしれないが。。。

ただ記事では,普通の生体弁が移植後5〜10年で機能不全になることを問題点としてあげ,今回の方法がいかにもその生体弁の欠点を小さくするかのような書きぶりだが,先行するヨーロッパで臨床試験では、「独ハノーバー大はこれまで120例の手術を実施、最長で12年間再手術せず済んでいる」とあるので,最長で「12年」なら,普通の生体弁でも長ければそのくらいもつ場合はいくらでもあるだろうし,必ずしも普通の生体弁よりも優れているとは言い切れないだろう。(言い切れたら臨床試験の段階を終えているだろうから,当たり前ではあるが。)

そう考えると,以前このブログの「新しい人工弁」に書いた「アクリル製の心臓弁の型を体内に埋め込み,しばらくして型の表面をコラーゲンなどが包み込み,人工の心臓弁が形成されたところで,型を取り除く」という方法の方が個人的には魅力的に思える。2011年5月当時の記事で「5年後の実用化を目指す」とあったので,順調なら,2年後の2016年には出来るはずなのだが,今ちょっとググってみた範囲では,この研究に関する最近の話がほとんど見当たらない。
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放射線被曝による発癌

2011年3月20日(日)

 この度の震災で,私自身は部屋が散乱した程度で,被害を免れた。しかし,心臓手術を受け,ワーファリンが必要な方で被災された方も多いだろう。10日近く経っても未だ食料さえ十分に行き渡らない状況の中では,ワーファリンを飲めないでいる方も多いのではないだろうか? これはワーファリンを必要とする者にとってははなはだ深刻な問題だと思うが,マイナーな問題だけに報道されることは恐らくないだろう。そうするとますます放置されることになりはしないか? 問題がすでに解決されていればいいのだが・・・


 ところで,福島原発が依然厳しい状況にある中,放射線被曝による健康への影響が話題になっている。放射線の影響ということで誰しも真っ先に思い浮かべるのは,急性の症状を別とすれば,発癌性の増大ではないだろうか。

 以前,このブログでも,腎シンチグラフィーの話の所で発癌性に触れたことがあるが,その中では
「10mSvにつき,1万人に1人,癌による死亡が増えるとも言われているようだ」・・・(A)
と書いた。(「高等学校物理II」(三省堂2004年)より)
最近の騒動の中で,これと大分違うように思える値を目にすることがある。

 例えば,東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一准教授によれば,


 100ミリシーベルト以上の被ばく量になると、発がんのリスクが上がり始めます。といっても、100ミリシーベルトを被ばくしても、がんの危険性は0・5%高くなるだけです。そもそも、日本は世界一のがん大国です。2人に1人が、がんになります。つまり、もともとある50%の危険性が、100ミリシーベルトの被ばくによって、50・5%になるということです。たばこを吸う方が、よほど危険といえます。



だそうである。(文中の「0.5%高くなるだけ」は「0.5(パーセンテージ)ポイント高くなるだけ」と言うべきだろう。パーセントなら「1%高くなる」という表現になるはずだ。普段ならどうでもいいようなことだが,「専門家がパニックを避けるために都合のいいことしか言っていない」という疑心暗鬼が広まる中で,数字を低く見せる操作をしていると勘ぐられかねない言い方には気をつけるべきだと思う)これを,(A)のような表現に変えると
「100mSvで,200人に一人,癌による死亡が増える」・・・(B)
となる。

 (A)で「10mSvにつき」という表現を使っているということは,線量と放射線による癌発生率との間の比例仮説を採用しているはずなので,(A)は
「100mSvで千人に一人の癌死」・・・(A)’
と言ってもよいだろう。すると(B)の数値の1/5になってしまう。

 また,カリフォルニア大学サンタバーバラ校物理学科のMonreal教授の講演「福島原発の放射能を理解する」(14枚目のスライド)によると,
1Sv=1000mSvの放射線を浴びたときの癌発生率の増加が,癌の種類ごとに異なるが,各癌ごとにおよそ1万人に数人増えるだけとなっている。ということは,全ての癌を合算しても,
「1000mSvで,1万人に数十人(千人に数人),癌発生が増える」
言いかえると
「100mSvで,1万人に数人の癌発生増」・・・(C)
となる。これは桁違いに少ない。
 この値は広島長崎の被爆者の白血病死の値に近い。「”放射能”は怖いのか」(佐藤満彦 文春文庫)によると,1Sv(本ではグレイという単位を使っており,シーベルトとの単位換算は放射線の種類によって異なるのだが,ガンマ線の場合は1グレイ=1シーベルトなので,仮にここでは1グレイ=1シーベルトとした)の放射線を浴びた被爆者の1年当たりの白血病による死亡率は,およそ100万人当たり3人程度である。よって,30~50年年追跡したとして,被爆による白血病死は10万人に1人程度となる。線量1/10の100mSvでは1万人に1人となり,(C)とほぼ同じである。
 ちなみに,「腎シンチグラフィー」の所で,自然放射線量が日本より10倍程高い所もあるが,そういう所で癌が多いということもない,というようなことを書いたが,上記の本によれば,自然放射線量が高い地域では,発癌率がむしろ低いことが報告されているとのこと。その理由として著者が考えているのが,「ホルミーシス効果」,すなわち,低量の放射線が生体にむしろ良い影響を与える効果である。この効果はヒト以外の動植物ではある程度認められているようだ。

 (A),(B),(C),どの値が正しいのか素人には判断できないが,ネットでちょこっと検索した感じでは,検索上位にヒットするサイトでは(B)の値に近い値を示しているサイトが多いようである。


(追記)ホルミーシス(hormesis)効果はWikiによると,ヒト以外の動植物でも確立されたものとは言えないそうだ。また,「ホメオパシー」と同一視されることもあるそうで,いわゆるトンデモ説なのかもしれない。
(2011/5/25再追記)hormesis効果の真偽は不明だが,少なくともトンデモ説ではないようだ。良い影響にせよ,悪い影響にせよ,低線量の放射線の影響自体,あったとしてもわずかであるので,これを他のリスク要因(喫煙,飲酒,食事,ストレス等)から分離して科学的に結論を導くことは相当難しいようだ。→Scienceの無料オンライン版「Fukushima Revives The Low-Dose Debate」
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