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発作性心房細動の発症を機に心臓弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)が見つかり,弁形成手術と心房細動に対するメイズ手術(ラディアル手術)を受け,さらに術後に発症した感染性心内膜炎の治療を受けた記録です。

迷い

 前回3月6日,手術日も決めて,一件落着とホッとしたのだが,落ち着いて考えてみると,「ん? 待てよ」となってきた。前回の外来では,仕事関係先に7月,8月の仕事が出来るかどうかの返答を待ってもらっていたことや,短時間に質問をこなそうとしたことなどで,気が急いていたこともあり,希望の医師に希望の日時に手術をしてもらえると言うだけで満足してしまっていたのだが,考えてみれば,執刀医である仁田先生は,まだ私の心臓の状態を紹介状の情報(発作性心房細動があって,前尖中央と後尖中央に逸脱がある僧帽弁閉鎖不全症なので,弁形成術とラディアル手術適応と考えられる)以外全く知らないのである。私としては,執刀医が私の心臓の状態をちゃんと把握した上で,弁形成の困難さの度合いやリスクの説明をしてもらうという手続きを踏んでから,手術を決定したかったという思いが強かった。そこで,日本海大学病院に電話をしたりして,内科の有野先生に,カルテが外科に回っていないのはどういう事なのか尋ねたりした。答は「紹介状に必要なことは書いてあるし,仁田先生とは裏で頻繁に連絡をとっているので,心配しないで大丈夫,問題ない」というものだ。正直,この回答にはガッカリした。医師の側は「俺たちに任せておけば,裏でしっかりやっておくから大丈夫だよ」と善意で思っているのだろうが,手術を受ける身としては,「任せておけば大丈夫」と判断する材料を表で提供してもらいたい。患者は医師の説明の仕方から,失礼ながら,その医師の人格・力量を推察し,命を預けられるかどうかの判断をさせていただくという面があると思う。前回の診察で,仁田先生の印象は良かったので,「あとはお任せ」と判断しホッとしたのだが,その判断にいたる手続きの一部に不備があった(検査結果が仁田先生の手に渡っていなかった)ように感じたため,迷いが生じたのである。そういう患者心理があることを全く想定してない回答に失望したのである。
 しかし,じゃあどうするか,となると,どうすることも出来ない。日本海大学病院での手術をやめて,他の病院にお願いするという選択はあるが,そうしたときに,希望する日に希望する医師の手術を受けられる保証はない。それに,執刀医自らがエコー等の検査データを見せながら患者に説明するというのは,ネット上の体験記では読んだことがあるが,これは比較的新しい個人病院でのやり方であって,伝統的な大学病院では期待できないことなのかもしれない。現に,今は知らないが数年前なら,執刀医が術前,循環器内科から送られてきた患者の顔を一度も見ないで手術をすることが当たり前ということもあったようだし,顔を見たことがないから,手術する患者を取り違えてしまったなんて言う事件も昔あった。さらには患者に無断で執刀医の変更をした時に医療事故を起こし,それがマスコミで騒がれてから初めて,遺族は執刀医が変更されていたことを知ったなどということもあった。さらに脱線を続けると,NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で岡山大学の小児心臓外科医佐野俊二教授が取りあげられていた回をYouTubeで見たが(今は削除されてしまった),若手を育てるという話の中で,「プレッシャーが人を育てる」という信条から,佐野医師は,若手にいつも突然手術を命じるという話があった。このときも,初めて心臓手術をする若手医師に,50歳代の男性の弁置換手術を,手術のわずか6時間前に突然命じるというエピソードがとりあげられていた。この若手医師は,途中ヒヤッとする場面があり,汗だくになりながらも手術を無事やり切って,心臓外科医として成長する様子が描かれていた。このように,泳ぎを教えるのに突然水の中に突き落とすようなやり方は,優秀な人間の育て方としては,有効な方法の一つではあると思うが,他方,手術される患者の立場で考えると,手術数時間前まで執刀医がわからない状況で待たされた挙げ句に,若手の練習台にされるのだから,うれしい話ではない。
 話が大分それてしまったが。前述のような私の不満は,伝統的大学病院の循環器内科と心臓外科の役割分担に対するものだと思うので,諦めるよりほかないと思った。もう,仕事のスケジュール調整はしてしまい,手術時期の変更は出来ないのだから,その時期に希望通りの医師に執刀してもらえるというだけで満足すべきだと自分を納得させた。

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外科初診

3月6日(金)

 外科の仁田先生の初診。予約は取っていなく(初診でも予約が取れると知ったのは後日),10時頃到着。雨降りなのですいているかと思いきや,大繁盛。外科の診察室は内科よりも少なく,待合所も狭いため,人口密度は内科以上。有野先生からの紹介状を提出してしばらくすると,お決まりの,若い先生による診察前面談。待つのはもとより覚悟の上だが,待合所から一向に人が減らない。「あたしは10時の予約なんですよ」と言っていた方が診察室に入っていったのが,11時45分。午前中の診察時間が終わってしまうのではないか? 待合所に掲示されている張り紙には,「なるべく予約時間の1時間以内にお呼びできるように努力しておりますが,遅れる場合もございますので云々」と書いてある。はじめから,1時間の遅れは折り込み済みなわけか。ここで,とんでもない自分の愚かさに気付く。実は,自分を執刀してくれるかもしれない先生に初めて会うというので,質問を山ほど用意してきたのだ。しかし,こんな質問を全部していたら,おそらく40~50分はかかってしまう。時間を計ってみると,診察時間は一人平均7分ほどである。こちらは初診で命がかかっているのだから,多少周囲に迷惑をかけてもいいだろうと居直って,長時間診察室に居座る,という選択ができないのが,悲しい日本人の性。急遽,質問を1/4程に絞り込む。俗に,「3時間待ちの3分診療」などと批判される大学病院ではあるが,これは病院側の非ではなく,大した病気でなくても大学病院へかかりたがる患者の責任だろう。それに,皆が大学病院へ押しかけてしまうというのも,誰でも平等に高度医療を受けられるという日本の良い面の裏返しでもあるわけだし。ただ今回は弁膜症程度だから良いが,もっと深刻な病気で,どうしても医師と時間をかけてじっくり話がしたい場合にはどうしたらよいのだろう??
 そんなこんなで,順番が回ってきたのは12時45分頃だっただろうか。本来ならもうとっくに午前の診療が終わって,そろそろ1時からの午後の診療が始まる時間だ。なるべく短時間に多くの事を聞きたいと焦り,どうしても早口になってしまい,矢継ぎ早に質問を繰り出してしまう私だが,それに対して,仁田先生は嫌な顔一つ見せず,落ち着いた物腰で丁寧に答えてくれる。まず聞いたのは,心房細動手術についてである。心房細動を治す手術の方法には大別すると,切ったり焼いたりする部分が少ない順に,(1) 肺静脈隔離(これならカテーテルアブレーションでも出来る),(2) 左房だけに限るメイズ手術,(3) 完全なメイズ手術(仁田先生の場合はラディアル手術)とある。このうち,どれをやるのか? 前にも書いたが,不必要に心臓を切り刻んでほしくはないが,かといって,せっかく開胸手術をするのに,心房細動が残ってしまったらもったいない。これに対する回答は「今,検査結果が手元にないので,断定的なことは言えないが,(2)の左房メイズ手術は,手術に要する時間が(3)のフルメイズ手術とほとんど変わらず,左房だけにとどめる意味があまりないので,おそらくやらない。心房細動の手術によって,回復までの日数が伸びると言うことはない。」というのもであった。「今,検査結果が手元にない」と聞いて,「えっ,検査結果が内科から外科に回ってないって何故? 今日,俺は何をしに来たんだ?」と思ったが,気が急くので,次の懸案であるポンプヘッドについての質問に移る(2009年2月27日の記事「ポンプヘッド」には,追記を入れた)。これに対する回答は「血液中に気泡が入ったりしないよう,丁寧に手術をすれば,問題ないだろう。アメリカ人は少しぐらい気泡が入ってもあまり気にしないところがあるが,その点では日本人の方が丁寧にやる傾向にある。そのせいか,あまり日本では問題になっていない」とのこと。これを聞いて「安心した」とはならないが,今,この問題をこれ以上心配してもしょうがないので,これで終わりにする。また,紹介状を書いてもらったというだけでは完全には安心できなかったので,念のため仁田先生に執刀してもらえるのか確認する。というのも以前,歯槽骨の中に完全埋伏している永久歯の抜歯を近所の歯医者で勧められ,紹介状を書いてもらって,公立病院の口腔外科に行ったことがあるのだが,紹介状には先生のAという名前が明記されていて,そのA先生の診察を受けたので,当然,A先生が執刀してくれるのかと思っていたところ,いざ手術となったら,突然,若い研修医のような女医さんBが現れて,そのB先生が手術を始めたことがあるのだ。当然局所麻酔で意識はあるわけだが,執刀しているB先生の脇で,指導するA先生が「あーダメ!そうじゃなくて・・・」とか「おー,そこ逆,逆!」とか言っているのを聞いていると,生きた心地がしなかった。(ただ,結果的には,B先生は上手だったのか,術後の痛みもほとんどなく,めでたしめでたしだった) そんなこともあるので,一応,仁田先生に執刀してもらえることを確認した上で,手術の日取りを決めてしまう。7月の初めまでは仕事が詰まっていたので,その仕事が終わり次第,入院して1週間後ぐらいにあたる7月13日か14日に手術ということになる。そうすれば,9月には仕事に戻れるという有野先生と同じ見立て。初対面の私にプライベートな話をしてくれたりして気さくで物腰が柔らかい感じだが,言葉の端々に自信が伺える先生だった。
 こうして診察室を出てきたら,午後の診察開始時間1時をとっくに過ぎている。待っている患者はまだ大勢いるし,一体いつ終わるのだろう? それはさておき,私としては手術も本式に決まり,仕事が出来るかどうかの返事を待ってもらっていた関係先に,7月8月はこういう事情で出来ないという連絡も済ませ,近くの喫茶店で昼食をとりながら,心からホッとしていた。思えば,この一月,自由になる時間のほとんど全てを弁膜症関連の調べ物のために費やしてしまい,そろそろ疲れてきた頃だ。やることはやって,もう決定したのだから,後は医師におまかせ,自分はまな板の上に乗るだけだと開放感に浸っていた。これにて一件落着。そんな気分だった。

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