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発作性心房細動の発症を機に心臓弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)が見つかり,弁形成手術と心房細動に対するメイズ手術(ラディアル手術)を受け,さらに術後に発症した感染性心内膜炎の治療を受けた記録です。

手術後初の経食道エコー検査

8月31日(月) 再入院7日目 手術後49日目

 昨日の熱も何事もなかったかのように引き,朝は36.4℃。36℃台前半になったのは,散歩をして汗をかいた後を除けば,術後初めて。しかし,手の平はまだ熱いので安心は出来ない。案の定,午後にはいつもの37℃に戻る。
 昨日の発熱の原因ついて,角井先生の推測は,

(1) これまでCRP等が正常値だったのは,生体の防御機能で生体膜が細菌を覆ってしまっているためと推測してきたのだが,その膜が破れて細菌が血中に放出されたため
(2) 抗生物質の副作用としての薬剤熱

のいずれかであろうというもの。感染性心内膜炎以外で可能性として考えられるものはないか尋ねてみると,
「肥厚,心筋症,石灰化」
などだそうでで,どっちにしても嬉しくない病気ばかりである。

 午前中,術後初めてとなる経食道心エコー検査を受ける。最初手術前に受けたとき(→2/23)は,これが一番辛いなどというネット上の体験談もあったし,なにぶん初体験だったので,胃カメラみたいなものを飲むことに恐怖心もあったが,実際受けてみると,精神安定剤で眠らされているうちにほとんど全て終わってしまい,苦痛らしい苦痛はなかったので,2度目となる今回は安心して検査に向かう。
 1回目と全く同様に検査を受けたが,ただ一つ違ったのは,今回は少しばかり目覚めるのが早かったということである。慢性的な寝不足(とはいっても最低6時間は寝ていたが)であった術前と違い,今は,毎日好きなだけ寝ている。昼寝を入れて毎日9~10時間ほど寝ていて睡眠十分の状態であるため,早く目覚めてしまったようだ。お陰で,最後の1分ほどは「オエーッ」という状態が続いて少し苦しかった。

 エアコンの風をコントロールするためにつけていたお気に入りの新聞紙工作(→8/27)を看護師さんに剥がされてしまった。師長命令らしく,理由は
(1) ホコリが溜まって不潔
(2) 結露で新聞紙が濡れてしまう。
(3) そうすると,カビがはえてしまので衛生的に問題
というもので,新聞紙の代わりにプラスチック製の羽根を取り付けてくれたが,プラスチック製の羽根でも上の(1)~(3)の欠点はそのまま残るというか,むしろ,定期的に交換可能な新聞紙より付けっぱなしの羽根の方が問題は大きいのではないかと思うのだが,女性には無抵抗主義なので諦める。おそらく本当の理由は,「見てくれが悪い」ということだろう。確かに羽根の方が見た目は良いのだが,風邪の制御という実用面では新聞紙工作に及ばない。しょうがないので,外から見えないよう内側にダンボールの切れっ端を突っ込んで調節した。

 今晩から胃薬がオメプラールからガスターD錠に変更になる。胃薬は術後,タケプロン→オメプラール→ガスターと度々変更になっているが詳しい理由は分からない。ほぼ毎朝の採血データに現れる副作用のリスクをなるべく下げるためだと思う。
 また,利尿剤のラシックス(20mg)とアルダクトン(25mg)の服用が終了となる。心臓手術を受けた後に利尿剤を止めるタイミングとしてはかなり早い方だと思うが,医者の立場からすると,数ヶ月置きにしか状態を診られない外来患者の場合だと,利尿剤を切るのが怖いのでついズルズル使い続けてしまうのだそうである(体に必要以上に水分が溜まると心臓への負担が増すので,水分を抜くため利尿剤を飲む)。幸い(?),私は入院しているので,万一状態が悪くなってのすぐに対処できるということで,この機会に少し早いが止めてしまおうということだそうだ。
 ということで,現在服用している薬は
(1)ワーファリン 3.5mg:夕食後
(2)ガスターD錠 20mg:胃酸の分泌を抑える胃薬。寝る前。
だけとなった。大分スッキリ。

 今日で8月も終わり。手術の傷自体は順調に回復してきているが,それでもまだ違和感は残っている。私が神経質すぎるだけかもしれないが,まだ寝る姿勢としては仰向けが断然楽だ。同じ姿勢ばかりだと腰が痛くなってくるので,意識的に横向きに寝るようにしているが,気がつくと仰向けになっているたりする。本当なら今日から仕事復帰させられるはずだったが,もし感染性心内膜炎に罹らなかったとしたら,このクソ暑いさなか,どの程度普段通りに動けたのだろう? そんなことも思いながらお気楽グダグダ生活を楽しんでいた。

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38℃

8月30日(日) 再入院6日目 手術後48日目

 朝,6時に起きたときには,体温も36.7℃で脈も比較的ゆっくり(80bpm)で,急に良くなった感じがした。しかし,9時頃にはまた怠くなってきて,体温も37.2℃に。それとともに,手の平が熱いのも復活してくる。
 ちなみに,昨日,体温計を家から持ってきてもらったので(外科入院時に買った安物の使えない体温計(→7/21)ではなく,病院で使っているのと同じ普通の体温計),好きなときに好きなだけ体温を測りまくっている。
 その後,風呂の許可がまだ下りていないので,看護師さんに頭を洗ってもらいサッパリする。看護師さんは床屋並みに洗髪が上手くて気持ちがいい。ただ,手術前に頭を坊主刈りにしていたし,毎日,熱いタオルで全身を拭いているので,1週間,風呂に入っていないが,さほど気持ち悪くはない。
 午後から怠くなってきて,17時にはついに38.1℃に。解熱剤を処方するほどの熱ではないので,アイスノンで頭を冷やす。すると,37℃後半くらいに落ち着く。
 21時に消灯後は,一眠りして22時に測ると37.4℃,トイレに起きた23:30には37.0℃と急激に下がった。何だったのか?

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血液培養4回目

8月29日(土) 再入院5日目 手術後47日目

 熱は相変わらず37.0℃前後。時々熱っぽいがほぼ元気。猛烈に手の平が熱くて不快だったのが少し良くなってきた感じ。

 血液培養用の採血をまたやることになる。また足の動脈からやられるのかと思って憂鬱な気分になったが,今回は腕の静脈からやることになる。その代わり,両腕から1つずつ,2セット採る。2セット採るのはガイドライン通りか。かなり太い針を使うので結構痛く,もしかすると純粋な痛みとしては足の動脈からやった方が痛くないのかもしれないが,とにかく動脈は怖いので,気分的には腕の静脈からやってもらった方がずっと楽だ。

 執刀医の仁田先生が様子を見に来てくれたとき,何かの話の中で
「細菌なら薬で殺せますし,血栓ならワーファリンで溶けますから大丈夫ですよ」
と言うようなことを言っていた。後で(頭の血の巡りが悪く,いつもその場で気がつかずに,ワンテンポ遅れて気付くのだが),
「血栓ならワーファリンで溶け」る
とはどういう意味か気になり出した。やはり感染性心内膜炎以外の可能性もあるのかなと思って,後で仁田先生に確かめてみると,これは「非細菌性血栓性心内膜炎」を念頭にした言葉だったようだ。


非細菌性血栓性心内膜炎
http://merckmanual.jp/mmpej/sec07/ch077/ch077c.html
非感染性心内膜炎(非細菌性血栓性心内膜炎)とは,外傷,循環血液中の免疫複合体,脈管炎,または凝固能亢進状態に対する反応として,無菌性の血小板やフィブリン血栓が心臓の弁および隣接する心内膜に形成されることを指す。症状は全身性の動脈塞栓症と同じである。診断には心エコー検査を用い,血液培養が陰性であることを確認する。治療には抗凝固薬を用いる。


 仁田先生はときどき様子を見に来てくれたが,これは私には非常にありがたかった。なぜなら,内科の角井先生と外科の仁田先生の二人から独立な意見を聞けるからである。大体,角井先生は慎重な,言い方を変えれば悲観的な見通しを示すのに対し,仁田先生の示す見通しはより楽観的だ。二人の見通しは微妙に違うのだが,それが私にはありがたかった。常にセカンドオピニオンを聞けるような状態なので,自分なりの見通しを立てるのに大いに役立つ。私としては,仁田先生の言っていることが,おそらく一番起こり得る確率の高いシナリオで,角井先生が最悪のケースを教えてくれているという感じで捉えてた。これがもし,角井先生だけから説明を受けていたとしたら,もう少し悲観的な思いで過ごしていただろうし,逆に仁田先生だけから説明を受けていたとしたら,私を不安がらせないために楽観的なことを言っているのではないかと疑心暗鬼になってかえって不安だっただろう。やはり複数の専門家の意見を聞いて,初めて自分なりのイメージができる気がする。外科に入院していたときにも,チーム医療制ということで,多くの医師に診てもらったが,彼らはチームとして意志を統一しているので,私にとっては一人と同じである。独立な意見を持った複数の医師に診てもらえるというのが私には理想的だった。
 角井先生の方が慎重と言ったが,だいたい内科医の方が外科医より慎重な性格の人が多いような気がする。内科というのは常に治療に関わるリスクを極小化しようとするのに対し,外科というのはそもそもリスクのある治療しかしないせいだろうか? 確率的に小さいリスクに対する態度は,明らかに内科と外科では違うような気がする。

 上の話とは関係ないが,外科病棟と内科病棟では,同じ病院で,フロアの階数にしてわずか二階違うだけだが,様子が結構違う。例えば
・入院患者の平均年齢は内科病棟の方がかなり高い。人生の大先輩方は,私のような未熟者と違い,世間体などというちっぽけな枠にはまろうとせず,自らの内なる欲求に忠実な行動をとる自由人が多い。例えば,ひっきりなしにナースコールを連打したり,逆にナースコールなどという不粋なものに頼らずに,「オーイ,オーイ」と大音声で看護師を呼び続けたり,看護師を家政婦に対するように叱りつけたり,怒鳴りまくっていたり,お気に入りの看護師とそうでない看護師に対する態度が笑っちゃうくらい違っていたり,看護師の指示に素直に同意はするものの決して守ろうとはしなかったり,などなどで,看護師さんの精神的疲労度は外科よりも高そうな気がする。そのせいか,看護師さん達も苛つく表情を見せることがある。外科でもICUでもいつも優しくニコニコしている看護師さんしか見たことがなかったので,看護師さんの苛つく顔を初めて見てしまった。怖いよぅ((( ;゚Д゚))) 夜中も,廊下に机を持ってきて必ず一人の看護師さんががそこにいる。転倒の危険がある人が勝手に歩き回らないよう監視している。
・内科では,ウォーキングカンファレンスと称して看護師さん達が教授回診よろしく,毎朝集団でゾロゾロと一人ひとりの患者のベッドサイドにやってきて,様子を診たり引き継ぎ事項の確認をしたりしている。看護師さん達には大切な行事なのだろうが,お陰で朝食の時間が遅くずれるのが嫌だなと思っていたが,そのうち,朝食後に時間をずらしてやってくれるようになった。
・点滴用の留置針内の血が固まらないようにする薬が,外科では抗凝固剤のペパリンを使っていたが,内科ではただの生理食塩水を使っている。
・外科では何でもあらかじめ決められた時間通りに物事(例えば点滴や起床,消灯,食事)が運んだが,内科では結構ルーズ。
・点滴針の留置期間は,外科ではダメになるまで使っていたが,内科では感染防止のため3日くらいごとに交換。
・体重測定は,外科では毎日,内科では一週間に一回。
・点滴ライン入れは,外科では手の空いている先生がやってくれたが,内科ではもっぱら研修医の仕事。最初,全て研修医がやると聞いたときはちょっと不安だったが,来る日も来る日もそれ専門に数をこなしているせいが,内科の研修医の先生は点滴針を刺すのが上手で一度も失敗がなかった。感激して点滴ライン入れのスーパードクターと呼ばせていただいていたところ,その研修医の先生がベテラン看護師さんの前でうっかりスーパードクターを自称してしまい,看護師さんに
「は? 何がスーパードクターよ。末梢(血管への針入れ)くらいでいい気になってるんじゃないわよ!」
と一蹴され
「ひーん,ごめんなさーい,いや,でも,これは,あの,キチンハートさんが,qあwせdrftgyふじこlp」
と蛇に睨まれた蛙になってしまった。(^_^;) がんぱれ未来のスーパードクター!

 入院生活も軌道に乗り始め,ダラダラと怠けた生活を満喫できてはいるのだが,何しろ緊急入院してしまったものだから,何も手元にない。せっかくの入院生活をテレビと雑誌だけでつぶしてしまうのではもったいないので,できれば家から本やiPodなどの娯楽必需品を持ってきたいと思い始めていた。幸い,点滴の回数が1回減ったので,点滴の合間にちょこっと家まで帰って必要な忘れ物を取ってくることは十分可能に思えた。そこで角井先生に外出許可を願い出てみることにする。
 ついてでにもう一つの要望として,食事を減塩食から普通食に切り替えてもらえないか頼んでみる。普通食の方が減塩食より味が濃いということはなく,どちらも薄味ではあるのだが,減塩食のメニューが一つに決まっているのに対し,普通食の場合にはAメニューとBメニューの二つから好きな方を選べるのだ。やはり食事を選べる喜びというのは大きい。外科のときには普通食だったが,内科はそこら辺,厳しいかなという気もしたので,ダメ元でのお願いだ。
 角井先生の返答は,予想に反して,普通食の件はOKだが,外出の件は家族等の付き添いがなければダメというものだった。私自身はあまり心配していないのだが,やはり脳梗塞を起こす危険性を考えての事だ。誰も診ていないところで倒れるということだけは何としても避けたいとのこと。
 ということで,結局,外出は諦めることにした。付き添いを頼むと,私が一往復するために,付き添いの人は二往復しなければならないので,さすがにそれを頼む気にはなれない。
 ちなみに,この後,せめて一人で売店に行くことくらいは許可しれくれないかとお願いしたが,それもダメだった。エレベーター内やちょっとした死角になる所で倒れる危険性を考えてのことだ。キビシー!

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感染性心内膜炎でほぼ間違いない

8月28日(金) 再入院4日目 手術後46日目

朝の採血3本。体温:朝37.0℃ 昼37.0℃ 夕37.0℃

 微熱は相変わらずだが,気分は良好。

 毎朝の血液検査の結果は異常なし。前回外科に入院していたときには,血液検査の結果はたまに口頭で医師から教えてもらう程度で,いちいちチェックしていなかったが,その反省も踏まえ,今回の入院ではプリントアウトした検査結果をもらうようにした。ただ,毎回要求するのも気が引けるので数回分まとめてではあるが。それによれば,CRPは0.10mg/dl未満(最低)で全く正常で,白血球数は,抗生剤治療開始後,がくんと減って4000個/μlだが,それでもまだギリギリ正常値の範囲である。赤血球数が400万個/μl未満で少な目なのは手術後ずっとだが,特に問題になるほどではない。

 今日からタゴシッドの点滴が1回減る。
「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)」
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2008_miyatake_d.pdf
によれば,タゴシッド(テイコプラニン)は,半減期の長い薬で,初回量400mgを2~3回/日投与,以後400mgを1回/日,30分以上かけて投与するとある。初めに一気に血中濃度を上げた後は,1日1回で良いようだ。(このガイドラインの存在は,この時点では知らず,退院後に知った。)

 ということで,以後の点滴スケジュールは

6時:ゲンタシン
9時:タゴシッド
14時:ゲンタシン
21時:ゲンタシン

となった。外科の時は,1日6回(バンコマイシン4回,ミノペン2回)だったが,これだと,1日が点滴だけであっという間に過ぎてしまう感じだったのに比べれば,今回の点滴は気分的にかなり楽だ。しかも,バンコマイシンもミノペンも1回に60分ちょっとかかるが,ゲンタシンは30分ちょっとで済む。ただ,タゴシッドというのが,粘性の高いトロトロした液体で,下手をすると,点滴のポタポタ落ちるあの部分の壁面を伝って流れ落ちてしまい,全然ポタポタ落ちるのが見えない。そうすると,点滴のスピードを調節できないのだ。最低30分以上かけるという指示で,普通1時間を目安にしているが,30分よりはるかに早く終わってしまったり,逆に,いつまでたっても終わらなかったりする。

 角井先生は,一昨日は,感染性心内膜炎である確率は6~7割程度と言っていたが,今日は
「やっぱり,感染性心内膜炎でほぼ間違いないと思います」
とのこと。エコーの動画などをじっくり見た結果,そう言ったのだと推測するが,そのときはボンヤリとしていてはっきりとその根拠を聞かなかった。聞いておけば良かった。
 ただ,再入院の日(→8/25)にやった,動脈からの採血による血液培養の結果は,この時点で未だ細菌は検出されていない。(この後も検出されずに,結局陰性だった。)これについては,抗生剤治療の結果として,検出までの間に菌が殺されて,陰性になることもあるとのこと。上記ガイドラインによれば,
「血液培養陰性の感染性心内膜炎は,全体の数%から30%程度」
だそうである。
「心不全兆候や塞栓症状もなく,心エコー図で疣腫(疣贅)のサイズ変化や弁輪部への病変進展を認めないなど患者の状態の状態が許せば,数日間抗菌薬を控えて血液培養を数セット施行する。」
ともあるが,これはやらなかった。一番最初の血液培養で「表皮ブドウ球菌」が検出されていたので,起因菌はこの表皮ブドウ球菌と結論したようだ。
 ただ,感染症ブログ:
http://blog.livedoor.jp/lukenorioom/archives/51438409.html#
によれば,表皮ブドウ球菌(Coagulase-negative staphylococci)の場合は,血液培養によって検出されたとしても,58~94%は汚染菌,つまり感染菌ではなくて,採取・培養時に紛れ込んだ雑菌と言うことである。つまり血液培養の結果が陽性であっても,実際に感染している確率は6~42%ということで,これだけでは全然診断を確定できない。そのため,表皮ブドウ球菌のように,汚染菌である確率が高い菌を検出する際には,血液培養を複数セット行うことが必要と述べられている。
 私の場合は,1セットしかやらなかったことが,今から思えば診断を遅らせたと思う。おそらく当初医師達は,感染性心内膜炎にかかっているとは本気で疑わず,念のために細菌が検出されないことを確かめようと血液培養を行ったのではないか。そして,予想に反し,表皮ブドウ球菌が出てきてしまったが,上記のように,これだけでは汚染菌である確率の方が高いので,診断を確定できなかったのではないかと思う。

 緊急入院をしてしまったので,本も何ももって来ていなく,インターネットも使えないので,この病気に関して情報遮断された状態になっていた。辛うじて携帯電話だけは使える。大部屋なので通話は出来ないが,メールやネット接続は特にお咎めなしだ。電源を入れているだけで医療機器に影響があるなどということも聞いたことがあるが,ペースメーカーを埋め込んでいる人でも埋め込んでいる側と反対側の耳を使うくらいの制約で携帯電話を使用しているので,たいていの医療機器では問題ないのだろう。携帯でネット検索というのはこれまでやったことがなく,通信費がいくらかかるのかも見当がつかずに不安だったのだが,ちょっとだけ調べてみると,感染性心内膜炎の診断基準として,1994年にDuke大学の医師達によって発表されたデューク診断基準(Modified Duke Criteria)というのがあることがわかった。前にも書いたが,感染性心内膜炎を100%確定診断する方法は,心臓を切り開いて疣贅を採取してくるしかないらしく,外部からの検査ではあくまで「その確率が高い」という所までしか言えないので,感染性心内膜炎と診断を下す際,多くの医師がよりどころとするのがDuke基準であるらしい。その基準を以下に引用する。
(http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02808_04)


<大基準>
(1) 血液培養による陽性
 ――典型的な心内膜炎の起因菌が2つの別々な血液培養から検出される
  ・連鎖球菌など,HACEKグループ
  ・黄色ブドウ球菌や腸球菌が検出され,他に感染巣がない場合
 ――検出菌にかかわらず,持続的に血液培養が陽性
  ・12時間以上の間隔をあけて採取された血液培養が2回以上陽性
  ・3回の血液培養がすべて,あるいは4回以上の血液培養のほとんどが陽性(最初と最後の採血間隔は1時間以上)
 ――1つの血液培養からCoxiella burnetiiが陽性か,抗IgG抗体価800倍以上

(2) 心内膜病変の存在
 ――心エコーにより以下のいずれかが認められる場合

 ・弁またはその支持組織などに可動性の心臓内腫瘤が存在

 ・膿瘍

 ・人工弁の新たな部分的裂開
 ――新たな弁閉鎖不全(既存する心雑音の悪化や変化のみでは十分でない)

<小基準>

(1) 素因:素因となる心疾患または静注薬物常用
(2) 発熱:38.0℃以上
(3) 血管現象:主要動脈塞栓,敗血症性肺梗塞,感染性動脈瘤,頭蓋内出血,結膜出血,Janeway発疹(注1)
(4) 免疫学的現象:糸球体腎炎,Osler結節(注2),Roth斑(注3),リウマチ因子陽性
(5) 微生物学的所見:血液培養陽性であるが大基準を満たさない場合,あるいは感染性心内膜炎として納得できる活動性炎症の血清学的所見
(6) 心エコー所見:心エコーでは感染性心内膜炎を疑うが大基準を満たさない場合

(注1) Janeway発疹:径5mm以下の扁平不整形で無痛性の紅斑で主に母指球、小指球にできる。
(注2)Osler結節:手指の末端の腹側にできる赤色~紫色の有痛性の結節である。手掌や足底にも出現し数日間で消退する。
(注3)Roth斑:眼球の硝子体の凝集から成るもので網膜上に綿花状のものとして認められる。

大基準2項目,あるいは大基準1項目+小基準3項目,あるいは小基準5項目を満たす場合,感染性心内膜炎と診断する。



これを私の場合に当てはめてみると
大基準(1):× そもそも2セット以上の培養をしていない。
大基準(2):○ 心臓内腫瘤(しゅりゅう)とは「こぶ」すなわち,ここでは疣贅のことだろう。可動性の疣贅が見つかったので緊急入院となったのだと思うので,これは当てはまるだろう。
小基準(1):× 僧帽弁逸脱症は「素因となる心疾患」だが,手術で治した。覚醒剤もやってません。
小基準(2):× 熱はあるが,37.0℃の微熱。
小基準(3):× 今のところ微熱以外,何の症状もなし。
小基準(4):× 今のところ微熱以外,何の症状もなし。
小基準(5):○ 一回だけ血培陽性。表皮ブドウ球菌(CNS)
小基準(6):× 大基準(2)を満たしているので

ということで,満たされているのは大基準1項目と小基準1項目なので,Duke基準からすれば感染性心内膜炎でないということになるが,これはあくまで一応の目安だろうから,実際の診断は個々の症例ごとに判断が必要となるだろう。

 当時は知らずにのんびりしていたが,Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/感染性心内膜炎)によれば,


黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌など強毒菌によって引き起こされる場合、多くは、数日から数週間の急激な経過をたどる。高齢者に多く、健常な弁が侵される頻度が高い。弁の破壊の程度は強く、また、敗血症に発展することも多い。合併症としては、心筋炎や細菌塞栓が多く、死亡率は高い。放置した場合、平均で4週間で死に至る。


なとど怖いことが書いてある。表皮ブドウ球菌は,皮膚常在菌だからといってなめてはいけなかったのだ。

 外科入院時同室で,私の再入院とちょうど入れ替わりで退院していった船橋さんが外来のついでに,まだ入院中の川杉さんと一緒に見舞に来てくれた。周りがどんどん退院していく中で,船橋さんも川杉さんも私も入院が長引いていたくちだが,その仲間に先に退院して行かれるとなんだが抜け駆けされたような感じだ。私も以前言われたが,船橋さんにも
「いつでも帰って来て下さいよ」
と言っておいた。その後,帰ってくることはなかったが。川杉さんは,軟禁状態で出歩けない私の所に度々遊びに来てくれ,コーヒーをおごってくれた。感謝します。

ワーファリンが3.0mgから3.5mgに再び変更。

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眼科受診:大部屋に移動

8月27日(木) 再入院3日目 手術後45日目

 朝の採血4本。体温:朝36.9℃ 昼37.1℃ 夕36.9℃ 

 今日の点滴:
06:00 ゲンタシン
09:00 タゴシッド
14:20 ゲンタシン
15:10 タゴシッド
22:00 ゲンタシン

8:30 角井先生の診察:感染性心内膜炎にかかると,半数で外科的措置(すなわち弁置換か弁形成)が必要になるとのこと。昨日の「再手術の可能性は五分五分」という見立ての根拠は,この事実なのだろう。私は感染性心内膜炎になったら,ほどんどの場合で手術になると思っていたので,半数が内科的措置(薬)で治るということが意外だった。角井先生は,「だから再手術も覚悟しておけ」という意味で言っているのだろうと思うが,私は,私のケースは早期発見でごく軽い部類に入るだろうと勝手に思っていたので,逆に「重症の人でも半数が内科的措置で治るなら,軽症の私が手術になる可能性は低いだろう」と解釈した。

 係長(師長に次ぐ看護師ナンバー2)から,
「今日,大部屋が空くので,大部屋に移動できますよ。なるべく急ぎますから待ってて下さいね。」
と言われる。大部屋に移るのは確かに私の希望なのだが,この快適な個室生活とおさらばするのは名残惜しい。できればもう数日,この部屋で寛ぎたい気もしたが,二人部屋なのでもう一人の人が入ってくるかもしれないし,その人と波長が合わなかったら,大部屋にいるより疲れてしまうだろうから,やはりさっさと大部屋に移った方がいいだろう。でも,移るのは急がなくていいのに・・・。
 そう言えば,今日で2泊3日目だが,差額ベッド代は2日分(2泊分)なのだろうか,3日分なのだろうか? あるいは,今日の滞在時間によって金額が変わるために急ぐといっているのだろうか,だったら急いでもらった方がいいけど,なんてせこいことを考えたが,結局,2日分で済んだ。

9:50~12:00 眼科受診
 感染性心内膜炎は眼底出血等,目に症状が出ることも多いので眼科の外来で検査。眼科からお呼びがかかってから車椅子で連れて行ってもらったのだが,ここも大繁盛で,一般の外来患者と一緒に延々と待たされる。それでも,一般の患者達が長椅子に窮屈そうに座っているのに対し,私は車椅子で一人悠々と座っていられるのはありがたい。
 眼科は,スーパーのレジのようにズラッと診察台が並んでいて,医師一人ともう一人,医師なのか看護師なのかわからないが,パソコンに向かってカルテか何かを打ち込んでいる人の二人一組で診察に当たっている。
 まずは,視力検査(両目1.2。さすがに20歳代の頃よりは衰えた)や眼圧検査をやり,そのあと,瞳孔を広げる目薬を点され,医師の診察(眼底検査)を受ける。特に問題はないようだが,眼科のしきたりで,初診の患者は全て教授の診察を受けることになっているらしく,また少し待たされ,最後に教授の診察を軽く受けて終わり。
 眼底検査はこれまでも何度か受けたことがあるが,瞳孔を開く目薬を点されると,半日は瞳孔が開きっぱなしになって,物の形がボンヤリとしか分からなくなるが,今回は,ハッキリ見えるようになるまでの時間が短かったような気がする。この数年で,速やかに効果の切れる良い薬が目薬が開発されたのだろうか?

14:00 大部屋に移動
 外科の時と比べると,同じくらいの大きさの部屋で,定員が一人少ない6人部屋なので,ほんのわずか一人分のスペースが広い。私は窓際で一層広い場所になった。景色も,外科の時は小汚いコンクリートの壁しか見えなかったが,今回は,目の前の神社の鬱蒼とした緑が見られて,格段に眺めがよい。窓際の幸運に喜んだのも束の間,頭の上から吹き下ろす冷たい風に心が凍り付く。7月15日の日記の見取り図(→7/15へ)にも描いたように,窓際のベッドの真上にエアコンが付いているのだ。
「馬鹿設計者がっ! こんな所にエアコンをつけるな!」
と何度でも毒づかずにはいられない。思えば,手術直後のICU大部屋時代からずっと,日本海大学病院のエアコンの風には悩ませ続けられ,もはや私の天敵である。
 しかし天敵にやられっぱなしでいるわけにはいかない。何しろ,外科の時はまだエアコンの隣だったから,カーテンの網目が風の勢いを殺してくれていたが,今は冷風の直撃を受け,ただでさえ少し寒気がしているのに,これでは細菌活動を助長してしまいそうだ。
 なんとかせねばと看護師さんに相談すると,新聞紙とテープを持ってきてくれた。これで,風の流れコントロールしようということだ。日本海大学病院に伝わる伝統の裏技のようだ。新聞紙の束をたくさん貼り付けると,ほぼ完璧な気流を作り出すことが出来た。
 気流の問題は解決したが,窓際と廊下側の温度差の問題はいかんともしがたい。廊下側の人にとって快適な温度設定にすると,窓際の人間には寒すぎるし,窓際に合わせれば廊下側が暑すぎるが,これは何とか妥協するしかない。
「馬鹿設計者がっ!」

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天敵







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キチンハート

Author:キチンハート
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