2010年(平成22年)1月8日(金) 手術後半年
体調は順調に回復し,昨年の12月からは,何の問題もなく仕事にも復帰している。電車に飛び乗るために駅の階段を駆け上がる程度なら全く問題ない。多くの方々に迷惑を掛けたので,その分を取りもどくべく,日々,感謝の気持ちを持って張り切って仕事をしている。
・・・と日記には書いておこう。
風邪が一番怖いので,人混みの中では必ずマスクはしている。マスクの風邪予防効果については,風邪を引いている人がマスクをすることによって他の人に移さない効果はあっても,風邪を引いていない人がマスクをすることによって風邪を予防する効果はない,と言う医療関係者が多いが,ちゃんとした証拠はあるのだろうか? 私が見聞きした範囲では,その根拠が「マスクの隙間からウィルスは楽々侵入できるので,マスクをしてもしなくても,呼吸する空気中のウィルス濃度は変わらない」ということだけのようだが,これはマスクの保温・保湿効果を無視しているのではないか? マスクの風邪予防効果の有無を調べるためには,被験者をくじ引きでマスクをする群としない群に分け,風邪ウィルスの蔓延する実験室の中で一定時間過ごしてもらい,両群の風邪感染率を比べれば良いのだろうが,ちょっと人権問題上実現困難な気がする。よって多分,「効果なし」との断定は単なる憶測に基づいているのではないか?
またもう一つ,小さい携帯用アルコール入りポケットティッシュを持ち歩いて,まめに手を拭いている。これは,入院中,外科では毎日,内科でも週に1回くらい(もう少し頻繁だったか?),アルコール入りウエットティッシュでベッドのテーブルや手すりを拭いていたので,それに倣ってのことである。病院で使っていたものと市販のものではアルコール濃度が違うのかも知れないが,まあ,気休めである。電車で手すりにつかまった後などにこれで消毒している。本当は,つかまる前のつり革を消毒したい所だが,衆人環視の中,さすがにそれは小心者の私に出来ることではない。
体温は36℃ちょいの平熱に戻ったが,なぜかときたま37℃くらいになることがある。ただし,全然辛くない。今回の心臓手術に続く感染性心内膜炎の感染を通じて,体温やCRPや白血球数などのデータも大事だが,自分の主観的感覚が大事だと感じた。この次,何かの折りに体に変調を感じ,しかし,検査データは健康であることを示しているというような場合があったとしたら,私は自分の「辛い」という感覚の方を,以前より信じることができるだろう。
今日は,退院後2回目の外来の日。仁田先生の外来としては,年明け最初ということもあるのだろう,いつもにも増しての大繁盛。午後一番1時の予約だったが,1時の段階でも午前中のお客さんの診察が終わっていない状態。結局呼ばれたのは3時過ぎだったろうか。今日,主に聞きたいことは,不整脈についてである。と言っても,
11/2の日記に書いた心室期外収縮の二段脈は,その後も数回現れたが,最近はすっかり出なくなっていた。ところがその代わりに,別種の不整脈が現れるようになっていた。それは,決まって夕食を腹一杯に食べ,ゴロッと寝そべって新聞を読んでいるときに起こる。心臓がガボガボした感じになり,変だなと思って,起き上がると治る。で,また寝そべるとまた始まる。どうも,腹一杯に食べたときに起こるようだ。朝食や昼食は腹がはち切れる程食べたりはしないので,起こらない。決まって夕食を腹一杯食べたときのみに起こるのだ。そこで,
OMRON HEALTHCARE 携帯心電計 HCG-801
で測ってみると,下のような波形が得られた。

これを
ナースのための早引きモニター心電図ハンドブック
で調べてみると,これは「上室期外収縮の二段脈」ではないかと見当が付いた。

この前の心室期外収縮が,心室での異常興奮によって引き起こされるのに対して,上室期外収縮は,右房と右室と左室の境界辺りにある房室束(ヒス束)と呼ばれる部分よりも上部(ここには心房も含まれる)からの異常刺激が原因となる。上室期外収縮の波形の特徴としては,P波が洞調律のP波と異なることがあるが,携帯心電図計の精度ではP波は小さすぎてよく見えない。ただ,心室期外収縮の場合は,T波がQRS波と逆向きになり,期外収縮のQRS波が洞調律のQRS波よりも大きくなるのが特徴なので,いずれも今回の私の不整脈には当てはまらない。消去法で行くと上室期外収縮の二段脈であろうと思った。前回の診察のときと同じように,携帯心電図計を仁田先生に診てもらうと,予想通り,上室期外収縮とのことであった。この不整脈は特に心配する必要のない不整脈であるが,心房細動の引き金を引いてしまうことがある。心房細動は心房内で生じた異常電気信号がさらに異常信号を誘起し,心房内をグルグル回ってしまうリエントリーという,いわば異常信号の連鎖反応によって生じるので,心房内で異常信号が頻繁に生じれば,心房細動が起こる確率も増えるのだろう。だが,これだけ上室期外収縮が頻発しても心房細動に移行しないと言うことは,ラディアル手術が効いている証拠とも考えられる。
夕食を腹一杯食べたときのみ起こるという点については,食後は胃に血液が集中し,
血行動態が変わるので,そういうことも十分に起こり得るとのことだった。
不整脈の種類を当てることができたので,心電図計を使うのも楽しくなってきたのだが,生憎(?),この後新たな不整脈が現れることはなかったし,上室期外収縮自体も消えていった。術後の心臓が落ち着くのには半年程はかかるということなのだろうか?
クレアチニンの値がどうなったかも知りたかったのだが,今日の血液検査ではクレアチニンを測らなかったようだ。次回は測るとのことだが,どうやら仁田先生は腎臓に関しては全く心配していないようだ。
退院間際にやったホルター心電図の結果を聞くと,
「あっ,そうっだった」
と完全に忘れていたようだ。前回に引き続いてのことなので,仁田先生もなんだかバツが悪そうに
「こういう所(科によってカルテが違って情報の伝達が一部滞る点を言っているのだろう)がウチ,というよりも大学病院の最大の欠点なんですよね」
と言っていたが,ホルター心電図計の結果などどうでも良いが(問題ないから連絡もないのだろうから),カルテの統一は是非していただきたい。電子カルテが導入されれば恐らく問題は解決するのだろうが。さらに,前にも書いたが,亀田総合病院でやっているように,その電子カルテを患者がパソコンや携帯でいつでも見られるようになっていると最高だ。(ただ,オンライン上に電子カルテを置く場合,外部に流出するリスクをどうするかという問題は残る。私の弁膜症のデータなど外部流出しても痛くも痒くもないが,例えば,美容整形のカルテが流出したら困る人もいるだろう)ただ,恐らくそういう変化への対応は日本海大学病院を初め,伝統ある大学病院ではなかなか進まないだろうなあという気もする。何も変えなくても,こうして日々お客さんは押し寄せてくるし,大学病院の医師というのは忙しい日々の中で,最新医学への対応にはプライドを賭けて取り組んでも,病院経営のシステム面や顧客サービスといった点について深く考えたり,改善のための作業をしたりすることに時間を多く割いているとは考えにくい。特に日本海大学病院なんて,個人病院がお金を払って広告を出している時代に,無料で宣伝できるホームページでさえおざなりな感じの地味な出来映えだ。
ワーファリンは,次回,2/26の経胸壁エコー検査をやった結果を見てから判断しようということで,まだ継続。少し,効きが悪いらしく,増量となる。初めは
「4mgにしましょう」
と言われたのだが,現在の量を誤解していたらしく,
「今,3mgだよね」
と確認され,
「いえ,3.25mgです」
と答えると,
「あれ,3.25か。じゃあ,4mgじゃ多すぎる。3.5mgにしよう」
ということになった。
「0.5mgのを半分にしているのか。さすがに内科は細かいな。」
と言っていたが,確かに外科と内科では感覚が違うような気がする。
ということで,現在の薬は
(1)ワーファリン 3.5mg:夕食後。
(2)パリエット 10mg:胃酸の分泌を抑える胃薬。夕食後。
である。
最後に,これまでどうせ無理だと思って聞きもしなかったことを思い切って聞いてみた。それは術中のビデオを患者に渡すサービスについてである。大和成和病院がこのようなサービスをやっていることは有名だが,南淵大和成和病院院長(当時)の言う,そんな「アホなこと」をしている病院は他にはないだろうと思っていた。慶應大学病院でも配布しているものの,たったの75秒で5000円もぼったくられるという体験談は拝見していたが,これでは意味がない。やはり無修正ノーカット版のを見たい。しかし,それはかなわぬ夢と初めから諦めていたのだが,術中のビデオ撮影そのものは多くの病院でやっているようだということが分かってきたので,ダメもとで聞くだけ聞いてみようと思ったのだ。恐る恐る
「こちらの病院では,手術中のビデオを患者に渡すサービスなんてやっていないですよね?」
と聞いてみると
「患者さんの希望があれば,お渡ししますよ。」
という思いがけない返答に欣喜雀躍したのも束の間,
「あ,でも,キチンハートさんの手術はいつでしたっけ・・・,7月かあ。じゃあ,もう消しちゃったなあ」
とのことで,喜んだ分,落胆も激しかった。
遅かった・・・なんでもっと早く聞かなかったんだろう・・・グズ
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