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発作性心房細動の発症を機に心臓弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)が見つかり,弁形成手術と心房細動に対するメイズ手術(ラディアル手術)を受け,さらに術後に発症した感染性心内膜炎の治療を受けた記録です。

入院

7月9日(木)

 入院の日。入院というのは,20歳くらいの時に一度だけ,軽い病気で1週間ほどして以来である。結局,入院まで心不全のような症状らしい症状はなく,心房細動の発作も初回の一発のみ。薬も何も飲んでいない。手術は当初の予定通り,来週の月曜日。

 病院についたのは午後1時か2時頃だったと思う。大繁盛店だけに,入院手続きだけでもかなりの時間待たされる。

 7人部屋の病室に着くと,当たり前だが皆さん寝ている。つらいのを我慢しているとしたら,下手に声をかけない方が良いかとも思って迷ったのだが,恐る恐る挨拶をすると,皆さん意外と元気に応じてくれた。総合病院なので,この部屋に心臓病の患者だけが集まっているわけではない。
 病院によっては,大部屋でも昼間から仕切りのカーテンを閉め切りにし,退院まで同室の人の顔を一度も見なかったとか,個人情報保護のため病室前の名札もなくしている所もあると聞いたが,ここではそういうことはない。この大学病院の校風(院風?)は,万事おおらかで,細かい事にはあまりこだわらない感じだ。
 ベッドは極狭で,幅が75cm程度しかない。ベッド脇も椅子を1脚置くスペースしかない。しかし狭くても,同僚達があくせく働いているこの時期に,これからしばらくの間,手術があるとはいえ,のんびり過ごせるかと思うと,開放感で心は広々とする。
 窓からの眺めは,最悪で,コンクリートのビルの壁しか見えない。廊下の反対側の病室なら,目の前の大きな神社の木々が見えて良かったのだが。

 受け持ち看護師の加賀見さんがやってくる。加賀見さんはなかなかの美人のように見受けるが,マスクを最後まで外さなかったのでついに素顔を拝むことは出来なかった。ただ,受け持ち看護師といっても,実際の担当看護師は,毎日,昼夜交代するので,受け持ちの看護師さんに特に多く担当してもらえるというわけではない。多分,私に関する書類の管理などは受け持ちの加賀見さんがやっているのだろう。
 加賀見さんから病院内での生活について説明を受ける。夜は9時消灯で,10時くらいまではカーテンを閉めておけばテレビを見ていても(テレビは必ずイヤホンで聴く),お目こぼしをしてくれるそうだ。どっちにしても,普段の生活からすれば,眠くなる時間ではない。
 手術前には,一度荷物を家族に持って帰ってもらうことになるそうだ。これは計算外だった。私は,なるべく家族らに迷惑をかけずに済むようにと思い,大きなスーツケースに下着の着替えもたっぷり入れてきたのだが,そんな配慮も無駄だった。考えてみればもっともである。手術後はICU(集中治療室)で標準的には2泊3日過ごすが,この日数は当然,確定しているわけではないので,その間,私のベッドを開けて待っているわけにはいかないだろう。だとすれば,その間,荷物を置いておくわけにはいかない。結局,心臓手術となると家族らに迷惑をかけないわけにはいかない。
 そして腕に,氏名,バーコード,ID番号が記されたリストバンドをはめられる。家畜になった気分。しかし,大勢の患者の中で,取り違えされるよりマシだ。採血や点滴も全て,このリストバンドのバーコードを読み取って管理される。
 風呂は,男が月,水,金,女が火,木,土で,日曜は男も女も入れるという割り振りだが,手術の前日の晩は男女の別なく優先的に入らせてもらえる。

 また,尿をカップラーメン程度の大きさのカップに受け,専用の測定器に流し込んで,一日の尿量を測定しなければならない。測定器のボタンを押す→蓋が開く→中に尿を入れる→蓋が閉じて尿量を測定となるが,これが病人でも慌てず操作できるように,非常にゆっくりと動作するようにしてあるので,結構待ちくたびれるし,面倒臭い。これは退院の日まで続いた。
 尿をカップに貯めて見ると,尿の色がほうじ茶のような色をしている。そういえば,6月後半に血尿が出たことがあったので,念のため看護師さんにその旨伝えておく。

 しばらくすると,今度は若くてかわいらしい女医さんがやってきた。病棟主治医の先生かと思って聞くと,「徳森チームの研修医の安木です」という答。病棟主治医は徳森先生だが,この病棟ではチーム医療制をとっていて,チーム全員で受け持ち患者を診ていくのだそうだ。実際,多くの先生に診てもらったが,看護師さんの場合,担当が変わる度に,例えば「夜担当の○○です」というように自己紹介してくれるので名前を覚えられるが,先生方はいちいち名を名乗ったりしないので,名前が分かる先生はごくわずかである。
 安木先生からは,お決まりの,万一の時の輸血のリスク,静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の予防,褥瘡(床擦れ)発生の危険性,手術で切り取った組織を教育,研究に使用すること等の説明を受け,同意書にサインをした。まあ,切り取った組織の教育,研究への利用という事以外は,不同意という選択肢はどう考えてもないのだが。

 一通りの説明を受け,家族らも帰ったので,ベッド脇にパイプ椅子を持ってきて本を読み始める。今回の入院に際して,一つ,心に堅く決めたことがあった。それは,少なくとも手術前は,夜寝るとき以外は病院患者のユニフォーム,パジャマにならないということである。どうも昼間からパジャマでいるのは病気になったような感じがして嫌いだし(あっ,病気だった),パジャマになるとつい寝たくなる。ただでさえ消灯時間が早いのに,昼寝までしてしまったら,夜寝られなくて昼夜逆転の生活になってしまうだろう。というわけで,外出着のまま椅子に座っていた。

 ところが,である。私の隣10cmのところにベッドがあるのだ。私の岩のように固い決意も,ベッドの甘い誘惑には30分と耐えることが出来なかった。結局パジャマに着替えると,ベッドに潜り込み,すぐに眠りに落ちてしまった。

 食事に関しては,20年前に一度入院したときも冷めたまずい食事だったし,病院食などそんなものと思いこんでいたが,これが意外にうまい。まず,温かいものが温かいままに出てくるし,1日6gの減塩食の割に味も素朴ながらしっかりついている。ただ,朝食に出てくるパンだけはまずい。無塩パンというやつなのだが,これがボソボソで口の中の唾液を全て吸い取ってしまうような,味も素っ気もない代物だ。パンに塩が必須だとは知らなかった。しかしそれ以外は,期待値が異常に低かったせいもあるが,どれも美味しくいただけた,最初のうちは・・・

 時間通り,夜9時に消灯される。昼寝もしてしまったし,寝られるわけがないと思っていたが,すぐに寝てしまった。

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