7月12日(日)
日曜日なので,病院は基本的には休みで,普段よりも静かな感じ。
朝食に出た冷たい牛乳を一気飲みしたら下痢をしてしまった。今晩下剤を飲む予定なのに,一足先に腹の中はスッカラカンである。
ICU(集中治療室)の見学を希望すれば出来るというので,折角だから見学させてもらう。ICUと言えば,厳重な管理の下でなかなか入室が許されないものと思っていたが,ここ日本海大学病院はそこらへん万事おおらかで,手を消毒し,マスクをつけただけで,普通に入っていける。見舞の時間や人数制限も,本当はあるみたいだけど,厳格には守られてはいない。
ICU管理については日本が神経質すぎるというような話を聞いたこともあり,ここのやり方は欧米流なのかもしれないが,折も折,新型インフルエンザが夏だというのに最悪のタイミングで流行を始めたことを考えると,ちょっと不安になる。見舞客の中に新型インフルエンザが潜伏している人が紛れていて,ICUの抵抗力のない患者にうつってしまったら,と考えるとちょっと怖い。
今にも生まれそうなお腹の看護師さんに中を案内してもらった。もうすぐ産休に入ると言っていたが,ここでなら仕事中に急に産気づいたとしても安心だろう。
個室と大部屋に分かれており,症状の軽い患者は大部屋にいる。大部屋といっても,一般病棟のように極狭ではなく,隣の患者との間には十分なスペースがある。大部屋の方には各ベッドの床頭台にテレビが置かれていたが,見ている人はいなかった。ICUは夜でも真っ暗にはならないので,眠れない人も多いそうだ。しかし,私は眠るのだけは得意なので,大丈夫だろうと思っていた。
ICUに持ち込む荷物には,全て油性ペンで名前を書き込まなければならない。直接書き込めないものはビニルテープを貼って書き込む。貴重品の持ち込みは禁じられ,腕時計も持ち込めない。私の腕時計は2,3千円の安物だと言っても認められない。しかしiPodは,こちらの方が高いのだが,認められた。順調ならば,2泊3日で一般病棟に帰るので,見ないだろうとは思ったが,一応,テレビカードと文庫本も持ち込むことにする。その他は,湯飲み,歯ブラシ,箸,スプーン,電気髭剃り器,ティッシュペーパー,ウェットティッシュくらいだったろうか。T字帯と浴衣とバスタオルは看護師さんにあらかじめ預けておく。バスタオルは,手術台の下に敷いておき,手術台からストレッチャー,ベッドへと患者を移すときに,バスタオルを担架のように持って移すらしい。なので大きめのが必要。
トライボールという肺機能練習器(→http://www.592834.com/kunren_02.htm)を手術前にやらされたという体験記も多かったように思うが,ここ日本海大学病院では,肺手術を予定されている方はやっていたが,心臓手術ではやっていなかった。その他これまで,手術前だからといって特別にすることは,食事が減塩食(6g/日)であるということ以外は何もない。
食事も夕食まで普通で,夜9時以降は絶飲食となる。
手術前日と言うことでシャワーを浴びる。
手術不可避と分かった頃には,手術前日の心境とはどういうものかと思っていたが,実際に体験してみると,いたって普通である。心配といえば,人工心肺で命をつないでいるときに,万一停電になっても大丈夫か(いつも聞こうと思っては最後まで聞き忘れた)とか,先週は不整脈学会に出席していたため,仁田先生は一度も手術をしていないはずである。久々の手術で手元か狂わないだろうか?週の初っぱなの月曜日でなくて火曜日の手術にしておけば良かったんではないか,とか,あまり切実でないものが思い浮かぶ程度である。
2月25日の日記に書いたように,百分の一に薄められた死の恐怖を積極的に味わいたいと思い出してから,ポンプヘッドの心配を別にすれば,死への恐怖は逆に遠のいてしまい,この手術を,大袈裟に言えば自分の世界観に影響を与えるようなビッグイベントにしたいという思惑は外れつつあった。むしろ,手術前日になっても心境に何の変化も起こらないことに,せっかくのチャンスをみすみす逃しているような焦りに似た思いを抱いていた。
ただし,自分で見える範囲の心はこのように平静だったが,潜在意識の領域ではどうだったか分からない。今日,下痢をしたことだって,もしかしたら冷たい牛乳を一気飲みしたことが主因ではなく,潜在意識が恐怖に怯えているための神経性のものだったのかもしれない。
夜9時に絶飲食となる前に,下剤が与えられる。普段から下痢症の私は,下剤を飲むのも初めてだ。飲んだ直後に腹が痛くなるのかと思ったが,そんなことはなく,明日の朝にちょうど出るような感じで効くという。
下剤で出れば,浣腸は免除の病院も多いようだが,ここでは下剤の効果によらず浣腸は必須。当然,浣腸も生まれて初めてだが,今晩の当直の看護師さんは生憎男性であるので,我が浣腸童貞はこの男の看護師さんに奪われることになりそうだ。(´・ω・`)
ネット上の色々な体験記により,手術のイメージは大体つかめていたが,ただ一つわからなかったのは,手術直後の大便についてである。下剤や浣腸で出し切っているので,出ないのかもしれないが,出たくなったらどうするのだろう?
この点を看護師さんに質問してみると,尻の下に平たい便器を差し入れて,寝たままするのだという。
ヾ(≧∇≦)〃ヤダヤダ
そんなことできるだろうか?
静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)予防のため,ふくらはぎをきつめに締める
弾性ストッキングが用意され,これを履いて寝る。
手術前夜は眠れなくなる人が多いため,睡眠薬を飲むか看護師さんに聞かれる。眠れないと何か困ることがあるのかと尋ねると,特にないというので,断る。この世で最後になるかもしれない夜を,眠れずに過ごすのも悪くないと思ったのだが,すぐに寝てしまった。
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私も手術前、意識しての恐怖感は不思議なほど全くなかったです。
手術台に上るまで、手術室の様子をしっかりと観察していました。
滅多にできる体験ではないと思いましたから(笑)
確かに万が一、という想いが全くなかったと言えば嘘だと思いますが
過度の恐怖心というものを脳の便利な機能がマヒさせてくれたのではないかな、とも思います。
問題は術前より術後の不安定な体調でしたから
キチンハートさんのブログをもっと早く見つけていれば
不安も少しは軽減しただろうと思っています。
私は女性ですが、キチンハートさんと同じような心の動きに共感するところが沢山あります。
今後も時々コメント入れさせていただきます。
コメントありがとうございます。その後、体調はいかがでしょうか?
私も今となっては、手術前にあんなに平然としていられたのが不思議な感じです。今、再び手術を受けることになったらと想像してみると、ビビっている自分がいます。多分、恐怖と不安の山を事前に一山越えた後でしか、あの心境にはなれないのかなと思っています。